「冷酒」と「冷や」の違いとは?作り方やおすすめの酒器も紹介

「冷酒」は吟醸酒の人気とともに一般的になったもので、冷やして飲む日本酒のことです。ところで似ている言葉の「冷や」との違いはご存じでしょうか?この記事では、そもそも「冷酒」とは何かということや「冷や」との違いのほか、おいしい「冷酒」の作り方やおすすめの酒器についても紹介しています。

「冷酒」とは?

「冷酒」とは冷たいお酒のこと

「冷酒(れいしゅ)」とは冷蔵庫や氷などで冷やした、冷たい日本酒のことです。現在、日本酒を冷やして飲むことが主流となっていますが、もともとは室温のままか燗にして飲まれるものでした。

江戸時代後半になるとほぼ年中燗酒が飲まれており、冷蔵庫が普及し始めてからも冷やした日本酒を飲むことは少なく、常温もしくは燗にすることが一般的だったのです。

吟醸系の人気とともに広まった「冷酒」

「冷酒」が主流となったのは、吟醸系の日本酒が人気となってからのことです。吟醸系の日本酒は華やか香り(吟醸香)が持ち味で、冷やして飲むことでよりおいしくいただけます。

なお、日本酒を冷やして飲む文化を作った草分けは、「龍力」の本田商店が1979年に発売した『大吟醸 米のささやき』といわれています。

「冷酒」には低アルコール度数のものも

「冷酒」向けに販売されている日本酒には、シャンパンのような発泡性のものや甘くて優しい口当たりのものがみられます。

これらの商品はアルコール度数が低めで口当たりの軽いのものが多いため、普段日本酒を飲みつけていない方におすすめできるものです。

「冷酒」と「冷や」の違いとは?

「冷や」とは常温の日本酒のこと

「冷酒」と混同されることが多い言葉として「冷や」があげられますが、「冷や」は常温(20~25℃)の日本酒のことを指しており、「冷酒」とは区別されるものなのです。

日本酒は温度が変わると味わいも変わるという特性があり、温度帯ごとに以下のような名前が付けられています。

冷酒
  • 5℃:雪冷え(ゆきびえ)
  • 10℃:花冷え(はなびえ)
  • 15℃:涼冷え(すずびえ)
燗酒
  • 30℃:日向燗(ひなたかん)
  • 35℃:人肌燗(ひとはだかん)
  • 40℃:ぬる燗(ぬるかん)
  • 45℃:上燗(じょうかん)
  • 50℃:熱燗(あつかん)
  • 55℃:飛び切り燗(とびきりかん)

「冷酒」を「冷や」と呼ぶ傾向も

秋口に出回る「冷やおろし」は、常温のまま出荷することから名付けられたものです。このことからも、「冷や」が常温のことを表していることがわかります。

しかし近年、「冷酒」のことを「冷や」と呼ぶ傾向もみられるようになっています。料理店などでオーダーするときには、念のため一言確認されることをおすすめします。

「冷酒」の作り方

「冷酒」は冷蔵庫に入れるだけでできる

「冷酒」は燗酒のような道具や手間などが不要で、瓶を冷蔵庫に入れておくだけでできます。しかし、冷蔵庫から出した瓶からグラスに注がれた日本酒は、時間が経つと温度が上がってしまうため、少量ずつ注いで時間を置かずに飲むようにするとよいでしょう。

「みぞれ酒」は凍らせてしまわないことがコツ

「冷酒」の温度帯からは外れますが、「みぞれ酒」も冷えた日本酒の楽しみ方のひとつです。冷凍庫に凍る手前まで入れておいた日本酒を、同じく冷凍庫で冷やしておいたグラスなどに勢いよく注ぐと、シャーベット状の部分と液体のままの部分が交じり合った、不思議な食感の「みぞれ酒」が作れます。

純米の吟醸酒だけを造っている京都・伏見の玉乃光酒造が販売している、「みぞれ酒」が失敗なくできる専用の商品を使うと手軽です。

「冷酒」におすすめの酒器は?

見た目の涼やかさならガラスの酒器

「冷酒」を飲むときの酒器にガラス製のものを選ぶと、見た目にも涼やかです。硬くて冷たい感触とキラキラ輝く透明感が、「冷酒」をいっそう引き立ててくれます。

大吟醸の香りと味わいが引き立つ専用の極薄タイプのグラスや、見た目が美しい切子のグラスなど、色やデザインの豊富さもガラス製酒器の特徴です。

錫製の酒器で日本酒がまろやかに

錫製の酒器も、「冷酒」におすすめです。錫は熱伝導性が高いため、酒器に口を付けたときに「冷酒」の冷たさが心地よく伝わります。

錫には日本酒の味をまろやかにする作用があることから、さまざまなデザインの酒器が作られており、割れたり錆びたりする心配がなく、手入れが簡単という点もメリットです。

冷たさを保てる冷酒器もおすすめ

「冷酒」に氷を入れると冷たさは保てますが、味が薄くなってしまうという難点があります。デカンタなどに日本酒を移してからアイスペールに入れておくとよいのですが、少し面倒です。

そこでおすすめしたいのが、氷を入れるくぼみがついた冷酒器です。「冷酒」を薄くすることなく冷たさをキープできる優れもので、とくに夏場に重宝します。

まとめ

「冷酒」と「冷や」の違いのほか、作り方やおすすめの酒器についても紹介しました。「冷酒」は、香り高い吟醸酒の魅力を引き立てる飲み方です。

また、アルコール度数が低めの飲みやすいものや、シャンパン感覚で飲めるスパークリングタイプの日本酒もあります。「冷酒」は冷やしすぎると味わいが薄れがちなので、様子を見ながら温度を調節してみてはいかがでしょうか。