「ヒツジ」とはどんな動物?ヤギとの違いや宗教での意味も紹介

ヒツジは世界最古の家畜とされており、現在も世界各地で飼育されています。おとなしい性格で、動物園ではヒツジとふれあうコーナーが設けられているほどです。この記事は、ヒツジの特徴やヤギとの違いのほか、宗教的な意味合いについても紹介しており、ヒツジについての知識が深まる内容となっています。

「ヒツジ」とはどんな動物?

ヒツジはウシ科の草食動物

ヒツジは、偶蹄目ウシ科ヤギ亜科に分類される草食動物です。ウシと同様に胃が4つあって、大量に食べた植物を反芻して消化しています。

2つに割れた蹄(ひづめ)は中指と薬指が変化したもので、同じ形の蹄を持つ偶蹄目の動物は有蹄動物の90%を占めており、ウシやブタのほか、キリン、ヤギなどたくさんいます。

ヒツジの品種は1000種類以上

ヒツジの家畜化は、紀元前7~6千年頃に古代メソポタミアで始まったとされています。現在は1000種類以上もの品種があるヒツジですが、家畜化される前の祖先は、中央アジアのアルガリのほか中近東のアジアムフロン、インドのウリアル、地中海のヨーロッパムフロンの4種にたどりつきます。

2種類あるヒツジの角

ヒツジの角には、らせん状のドリルのようにまっすぐに伸びる「ラセン角」と、カールしながら丸く伸びる「アモン角」の2種類があり、ほとんどの場合、角は左右1対になっています。

ヒツジの角は骨が変化した器官で、生え変わることなく生涯伸び続けるものですが、家畜化の過程で退化した種が多く、飼育されている個体の場合は角を切られているケースも多いようです。

なお、飼育されているヒツジの尻尾はそのままにしておくと不衛生になるため、小さい間に切ってしまいます。

家畜としてのヒツジの特徴は?

ヒツジは多目的に飼育されている家畜

ヒツジは主に羊毛用・肉用・毛肉兼用を目的とするもので、羊毛用としてはメリノ種、肉用にはサウスダウン種やサフォーク種、チェビオット種、兼用にはコリデール種が飼育されています。

毛以外にも乳はヨーグルトやチーズ、脂肪(ラノリン)は化粧品や軟膏の基材として利用されており、皮は紙が作られるまで「羊皮紙」として筆記用に用いられていました。

羊毛ヒツジの毛は生え変わらない

羊毛用のヒツジは品種改良されたことによって、自然に毛が生え変わることがありません。したがって人間が毛を刈らなければどんどん伸び続けてしまい、病気になってしまうのです。

毛刈りは年に1度、冬が過ぎて暑くなるまでの間に行われることが一般的で、オーストラリアでは9~10月ごろが適切な時期となっています。

羊肉は世界的によく食べられている食肉

日本ではあまり食べられていない羊肉ですが、世界的には牛肉より多くの地域で食べられています。

特にイスラム教国やヒンズー教国では豚肉を食べることが禁止されており、牛肉も特別なルールに則って精肉されたもの以外は食べられないことから、中東では主に羊肉が食肉として根付いているのです。

ヒツジとヤギの違いとは?

ヒツジもヤギもウシ科ヤギ亜科

ヒツジはウシ科ヤギ亜科ヒツジ属、分類上近縁のヤギはウシ科ヤギ亜科ヤギ属に分類されており、近縁関係にあります。

生育環境は、ヒツジよりヤギの方が温暖な気候に適応していますが、これは体毛の量の違いによるものです。また、ヒツジは平坦な場所を好み、ヤギは高いところを好むという違いがみられます(ヤギは漢字で山羊と書きます)。

エサにも違いがあり、ヒツジは背の低い草を良く食べますが、ヤギは草だけでなく木の実や樹皮なども食べます。

ヒツジとヤギの鳴き声は似ている

ヒツジとヤギの鳴き声はどちらも「メェ~」というように聞こえ、違いはあまり感じられません。強いて言うなら、ヒツジは低めのトーンで一本調子に伸びていますが、ヤギはやや高めでビブラートが掛ったように聞こえます。

ちなみに英語圏で羊の鳴き声は「Baa Baa(バァバァ)」、フランス語では「Bêêê(ベェェ)」と表現されていますが、ドイツでは「mäh mäh(メェメェ)」、中国では「咩咩(メェメェ)」と日本に近い音で受け止めているようです。

ヒツジの語源は干支の「未」か

ヒツジの語源には、未の方角は南南西であることから、日が西へさがる通路という意味の「日辻(ひつじ)」となった説があります。

他には、ヤギの「野牛(ヤギュウ)」に対する「養牛(ヒタシウシ)」の音変化によるというものもあるようです。

ヒツジの宗教的な意味合いとは?

神の子羊とはイエスのこと

聖書にはしばしば「ヒツジ」が登場しており、神へ生け贄としてヒツジが捧げられている記述が多くみられます。

聖書のなかにある「神の子羊(the Lamb of God)」とはイエス・キリストのことで、贖罪のための完全なる最後の生贄として、十字架に架かりました。

羊飼いにもたとえられたイエス

神に捧げられるヒツジにたとえられたイエスですが、聖書では神や聖職者のことを羊飼い、大衆のことを羊の群れと表現しています。イエス自身も自らを「良い羊飼い」と呼び、ヒツジのために命を捨てると語りました。

また、99匹のヒツジを放置してでも1匹の迷えるヒツジを探すというたとえ話で、救われない人間が一人でもいることは神の御心ではないということを言っています。

キリスト教ではヤギは悪魔を意味するもの

ヤギもヒツジも、もともとは生贄として神に捧げられていた動物でした。しかし、徐々にヤギだけが悪魔の化身として扱われるようになったのです。

これはヤギに似た姿をしたギリシャ神話のパン神やエジプト神話のアモンを異教の象徴としたことと、ヤギが草を根こそぎ食べてしまうため土地が荒れてしまうことが原因のようです。

まとめ

「ヒツジ」の特徴やヤギとの違いのほか、宗教での意味なども紹介しました。ヒツジは、羊毛や食肉以外にも利用価値が高い動物であるころから、世界各地で飼育されています。

日本ではヒツジとヤギは外見の違いくらいしか感じられませんが、キリスト教圏においてはヒツジはよいもの、ヤギは悪いものという位置づけです。