ことわざには「虎」が含まれるものが多くあります。かつての日本では身近な動物ではありませんでしたが、中国をはじめとした海外の情報から虎のことを知り、ことわざに採用していきました。
「虎」のことわざを覚えておけば、寅年の年賀状にも活用できるでしょう。「虎」が含まれることわざのうち、代表的なものを紹介します。
「虎」を含むことわざとは?
「虎」を含むことわざ一覧
- 虎穴に入らずんば虎子を得ず(こけつにいらずんばこじをえず)
- 虎の威を借る狐(とらのいをかるきつね)
- 虎の子(とらのこ)
- 雲は龍に従い風は虎に従う(くもはりゅうにしたがいかぜはとらにしたがう)
- 虎は飢えても死したる肉を食わず(とらはうえてもししたるにくをくわず)
- 牡丹に唐獅子、竹に虎(ぼたんにからじし、たけにとら)
- 苛政は虎よりも猛し(かせいはとらよりもたけし)
- 騎虎の勢い(きこのいきおい)
- 虎に翼(とらにつばさ)
- 張り子の虎(はりこのとら)
- 虎は千里行って千里帰る(とらはせんりいってせんりかえる)
- 虎を描きて猫に類す(とらをえがきてねこにるいす)
- 猫にもなれば虎にもなる(ねこにもなればとらにもなる)
「虎」を含むことわざの特徴
「虎」はことわざの中で、いい意味・悪い意味の両方で扱われています。いい意味の場合、「虎」は力強く勢いがあるもの・優秀なものの象徴です。虎の子供が貴重なものとして扱われることもあります。
悪い意味の場合、猛獣として危険という点に注視して用いられています。
ことわざを寅年の年賀状に使うことも
「虎」を含むことわざは、寅年の年賀状で使われることもあります。いい意味のものを目標として使うだけでなく、悪い意味のものを「こうならないように」という戒めとして用いることもあるでしょう。
例えば、後ほど紹介する「張り子の虎」は悪い意味を持っています。そのため「張り子の虎にならないよう、自分の意思をしっかり持っていきたいです」のように使うことが可能です。
「虎」を含む有名なことわざ
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」は危険でも挑戦しなければ成功しない
「虎穴(こけつ)に入(い)らずんば虎子(こじ)を得ず」は、「危険でも挑戦しなければ成功しない」という前向きな意味があります。虎の子供を手に入れるためには、危険な虎の巣へ入らなければいけないという例えです。
「虎の威を借る狐」は実力者に頼って威張る小者
「虎の威を借(か)る狐」とは、実力者や権力者に頼って威張っている小者のことです。ここでは「小者(こもの)」を「地位や実力がない人」という意味で用いています。
狐が「自分は百獣の王だ」だと虎を騙した物語が由来です。誰もが恐れる虎に自分の後ろを歩かせることで「動物たちが逃げているのは狐を恐れているからだ」と信じさせました。
「虎の子」とは大切なもの・秘蔵のもの
「虎の子」とは、大切なものや秘蔵のもの、金品などを表します。虎は自分の子供を大事にするため、そこから「手放さない大切なもの」という意味になりました。
「虎の子」の意味と語源は?使い方や英語に「虎の子渡し」も解説
「虎」を含むかっこいい意味や響きのことわざ
「雲は龍に従い風は虎に従う」は似た者が互いに求め合うこと
「雲は龍に従い風は虎に従う」とは、似た者同士が互いに求め合うことや、いっしょになることで上手くいくものだと例えたことわざです。「優れた指導者には優れた部下が集う」という意味でも用いられます。
空を飛ぶ竜は雲を、地を走る虎は風を従えて勢いを増すことから生まれました。
「虎は飢えても死したる肉を食わず」は高潔な人は賄賂を受け取らない
「虎は飢えても死したる肉を食わず」の意味は「高潔な人は賄賂を受け取らない」です。虎には「死んだ動物の肉を食べない」という俗説があることから生まれたことわざです。虎を「高潔な人」、死んだ動物を「賄賂などの不正な金品」に例えています。
「牡丹に唐獅子、竹に虎」とは取り合わせの良いものの例え
「牡丹に唐獅子(からじし)、竹に虎」とは取り合わせの良いものを例えたことわざです。「唐獅子」とはライオンを表します。唐獅子は牡丹の花の下、虎は竹藪を安住の地にすると伝えられていたことが由来です。
「虎」の勢いや恐ろしさに注目したことわざ
「苛政は虎よりも猛し」は悪政は虎より恐ろしいこと
「苛政(かせい)は虎よりも猛し」は、苛政(悪政のこと)は狂暴な虎より恐ろしいと戒めることわざです。中国の思想家・孔子が残した言葉が由来になっています。
行政に関わる人(政治家など)だけでなく、人の上に立つ指導者全般の心得として用いられます。
「騎虎の勢い」は勢いがついたら途中で止められないこと
「騎虎(きこ)の勢い」の意味は「勢いがついたら途中で止められない。完遂させるしかない」です。「成り行き任せにする」という意味でも使われます。「虎に乗って勢いよく走りだすと、途中で降りられない」ことを表しています。
「勢いに乗る」というポジティブな意味合いで使うのは誤用ですので、注意しましょう。
「虎に翼」は強い者がさらに強力になること
「虎に翼」とは、強い者がさらに強力になることを例えています。「強力な虎が翼を得て飛べるようになればさらに恐ろしい存在になる」ことから生まれたことわざです。「虎に羽」「虎に角」と表現することもあります。
「強力になられると不都合な人物」に対して、ネガティブな文脈で用いられる傾向があります。
「虎」を含むその他のことわざ
「張り子の虎」は主体性がない人・虚勢を張っている人
「張り子の虎」には複数の意味があります。1つ目の意味は「主体性がない人」です。「張り子の虎」とは虎の形をしたおもちゃで、首がよく動く仕組みです。そのことから「なんにでもただ頷いている、主体性のない人」を例えるようになりました。単純に、首を動かす癖がある人を表すこともあります。
2つ目の意味は「実力がないのに、虚勢を張っている人」です。「張り子の虎」が見た目は虎でも、ただのおもちゃのため恐ろしくないことから生まれた意味です。
「虎は千里行って千里帰る」は行動力がある・親の愛情
「虎は千里行って千里帰る」の主な意味は「行動力があること」「勢いが盛んなこと」です。虎は1日で千里走って行き、また戻ってくることができると言われていたことから生まれたことわざです。
「子供への親の愛情の深さ」を表すという説もあります。虎が千里駆けるの目的は「子供の元へ帰る」だと考えられているためです。
「虎を描きて猫に類す」は優れた人の真似をしても失敗すること
「虎を描きて猫に類す」の意味とは「実力がないのに優れた人を真似しても失敗する」です。虎を絵にしても実力を表現しきれず、猫のように弱い存在に見えてしまうことを表します。
「虎を絵が着て犬(狗)に類す」としても同じ意味になります。
「猫にもなれば虎にもなる」は状況によって別人のようになること
「猫にもなれば虎にもなる」とは、状況によって別人のようになることを例えたことわざです。同じ人でも状況に応じて猫のようにおとなしくも、虎のように狂暴にもなることを表現しています。
まとめ
「虎」が含まれたことわざには、いい意味も悪い意味もありました。また、猫科の動物のため猫といっしょに用いられることもあります。年賀状の挨拶文やスピーチなどに、「虎」のことわざを活用してみてください。