日本酒には、酒米や製造方法などさまざまな分け方があります。酒税法を基準にすると8種類に分けられ、。この記事では、日本酒の種類について、清酒との違いからさまざまな基準による区分まで幅広く紹介しています。
日本酒の種類とは
日本酒の種類は「特定名称酒」「普通酒」
日本酒は製法や原料などによって細かく分類されており、それぞれに名称が決められていますが、大別すると「特定名称酒」とそれ以外の「普通酒」に分けられます。
「特定名称酒」は、国税庁が「清酒の製法品質表示基準」として定めました。「特定名称酒」とは、原料や精米歩合など定められた要件を満たす日本酒に「特定の名称」が与えられたものです。
「特定名称酒」は8種類に分けられる
「特定名称酒」は、米と米麹だけで製造された「純米系」と醸造アルコールを加えた「本醸造系」に大別されます。
ここに「精米歩合」による分類が加わることで、さらに8種類に分けられます。「精米歩合」とは、精米後に残る米の割合のことです。「大吟醸酒」は半分以上削り取られた米を使うため、コストが高くなります。
また、「本醸造系」に使われる醸造アルコールは、香りを高め風味を整えるために添加されるものです。品評会に出品される高級日本酒には、醸造アルコールを添加したものが多くみられます。
- 純米酒:精米歩合の規定なし
- 特別純米酒:精米歩合60%以下または特別な醸造方法
- 純米吟醸酒:精米歩合60%以下
- 純米大吟醸酒:精米歩合50%以下
- 本醸造酒:精米歩合70%以下
- 特別本醸造酒:精米歩合60%以下または特別な醸造方法
- 吟醸酒:精米歩合60%以下
- 大吟醸酒:精米歩合50%以下
「清酒」は日本酒の一種
居酒屋などのメニューでは「日本酒」と「清酒」に区別はなさそうに見えます。しかし、厳密にいうと「清酒」は「日本酒」の一種であり、酒税法による以下の定義を満たしたもののことを指しています。
- 「米」「米麹」「水」を原料として発酵、こしたもの
- 「米」「米麹」「水および清酒かす」「その他(政令で定められた物品、合計重量が米をこえてはいけない)」を原料として発酵、こしたもの
- 清酒に「清酒かす」を加えてこしたもの
- アルコール分が22度未満であること
「こしたもの」とは、原料を発酵させた後に搾り酒粕を分離したものという意味です。したがって、「にごり酒」は清酒ですが「どぶろく」は清酒ではありません。
日本酒の製造方法による種類分け
「火入れの有無」による区別は4種類
一般的な日本酒は、品質保持のため65℃前後での加熱殺菌(火入れ)を2回(貯蔵前と瓶詰時)行います。この火入れを全く行わないものを「生酒」、貯蔵前にだけ火入れするものを「生詰め酒」、瓶詰の時にだけ火入れするものを「生貯蔵酒」と呼んで区別しています。
2度火入れした一般的な日本酒と「生詰め酒」は、常温で保存できます。「生酒」と「生貯蔵」は要冷蔵となっていますが、特殊な濾過方法を行うことによって常温で保存できる「生酒」も登場しています。
なお「生詰め酒」は「ひやおろし」とも呼ばれており、夏を超して熟成した味わいが秋の味覚とよく合うものです。
- 日本酒:貯蔵前と瓶詰時に火入れをする/常温保存可
- 生酒:全く火入れをしない/要冷蔵(常温保存可の種類もある)
- 生詰め酒:貯蔵前だけ火入れをする/常温保存可
- 生貯蔵酒:瓶詰時だけ火入れをする/要冷蔵
「割水の有無」による種類分け
一般的な日本酒は、製造過程で「割水」と呼ばれる加水を行い、アルコール度数や風味を調製して製品化されています。一方、「割水」を行わないものは「原酒」と呼ばれ、アルコール度数18%以上と飲みごたえのある味わいが魅力です。
- 日本酒:「割水」を行う
- 原酒:「割水」を行わない
「濾過の有無」による種類分け
日本酒は、「米を発酵させてこしたもの」と定義されるものです。この「こす」工程は、搾り(発酵を終えた醪を酒と粕にわける工程)と呼ばれており、一般的に搾りのあと活性炭で濾過したものが製品化されています。
この濾過を行わずに製品化されたものが、「無濾過酒(むろかしゅ)」と呼ばれるものです。「無濾過酒」は旨味とコクが濃厚で、深い味わいが楽しめます。
- 日本酒:濾過を行う
- 無濾過酒:濾過を行わない
「酒母造り」の方法は大きく2種類
日本酒を製造する過程のひとつが「酒母(しゅぼ)造り」です。日本酒の「もと」になることから、「酛(もと)造り」とも呼ばれていました。酒母造りは「速醸系(そくじょうけい)」と「生酛系(きもとけい)」の大きく2種類で、使う乳酸が「人工」か「天然」かで異なります。
「速醸系」は人工の乳酸を使い酒母をつくる方法で、日本酒全体の90%が採用しています。一方の「生酛系」は、天然の乳酸を使って仕込む伝統的な酒母製造法です。「生酛系」はさらに「山卸」と「山廃」に分けられますが、いずれも時間と手間が掛かります。
- 速醸系:人工の乳酸を使う
- 生酛系:天然の乳酸を使う
日本酒と酒米の種類
日本酒によく使われる酒米の種類
日本酒の原料となる米は、酒米または酒造好適米と呼ばれます。たとえば、人気銘柄の「獺祭」に使用されている「山田錦」は酒米の王者とも呼ばれており、シェアのおよそ4割を占めるものです。次いで2位がシェア3割弱の「五百万石」、3位が1割弱の「美山錦」となっています。
なお、残りの2割強には「オマチスト」と呼ばれる熱狂的なファンが支持する「雄町」のほか、「山田錦」の母にあたる「山田穂」、プレミア日本酒として知られる「十四代」醸造元の高木酒造が広めた「愛山」など多種多様な酒米があります。
日本酒と酒米の表示における注意点
酒米の種類によって、日本酒の醸造で重要となる要素(心白が大きい・タンパク質が少ないなど)が異なります。品評会に出品される日本酒の多くは一定の要素を満たした酒米を使用しており、消費者からの人気も高くなる傾向がみられます。
ただし、原料米のうち50%以上使用していればラベルに表記できるため、必ずしもすべて高いランクの酒米を使っているとは限りません。酒米の生産地や種類、使用している割合など表示を確認するとよいでしょう。
まとめ
日本酒の種類には、製造方法や原料の酒米、国税庁の基準などさまざまな分け方があります。日本酒の種類のひとつ「清酒」は、一般的に「日本酒」と呼ばれることが多いですが、厳密には定義があることを覚えておきましょう。
また、原料米の種類は全体の50%以上使用していれば表示可能なため、大きく記載されている酒米100%ではないことも注意するポイントです。